Towards Change市民広告展がイギリス国立市民参加連携センターで紹介されました

炎上広告に対するコミュニティ主導型解決策

· news

Towards Change市民広告展での市民参加の形態が、イギリス国立市民参加連携センター(National Coordinating Center for Public Engagement)で紹介されました。

 

炎上広告に対するコミュニティ主導型解決策の開拓 

 

2024年1月、私たちはブリストルの一般市民を対象とした一連のオンライン・ワークショップを開始しました。小規模なワークショップから始まったこの市民広告Towards Changeプロジェクトは、クリエイティブ・エージェンシーやマーケティング支援会社、広告主、社会活動家、大学教授、イギリスと日本にまたがる社会団体の代表者など、幅広いステークホルダーの支援を得て、包括的な多文化プロジェクトへと発展しました。

broken image

 

10年前のプロテイン・ワールドの広告は、黄色いビキニに身を包んだ色白で曲線的でありながら痩せた女性をフィーチャーし、「Are you Beach Body Ready?( ビーチボディの準備はできてる?)」というキャプションを添えたもの。

ジェンダーのステレオタイプを醸成するとして批判があがり、広告審査機関ASAに撤去指示を受けて撤去されたにもかかわらず、依然としてこのような女性へのゆがんだメッセージを含んだ広告が蔓延しています。

broken image

市民広告Towards Changeプロジェクトは、単に倫理に反する広告を批判するのではなく、より社会責任ある広告のエコシステムを構築することを目指しています。広告業界の構造的な閉塞性から脱却し、その内容から物議を醸した広告をポジティブで包括的なメッセージへと共同で再構築する、市民参加型アプローチです。多様化した社会では、客観的な倫理的真実は存在せず、したがって広告業界は広告がその時々の社会の規範や価値観に合致するよう、一般市民の声を聞く必要があります。

 

改革の必要性

英国の広告審査機関(ASA)は禁止されたプロテイン・ワールドの広告のような、物議を醸す広告への対応を担っています。2022年だけでも、31,227件の広告に対して修正または撤回指示が出されました。これは、凝り固まった広告慣行についてオープンで多角的な議論の必要性を意味しています。更なる批判を恐れるがゆえに、広告業界の実務家が改善に向けて、物議を醸した広告について議論することはほとんどありません。

したがって、広告の改善プロセスは遅れ、消費者の意志にそぐわぬ広告が再生産され、禁止されるのといったことを繰り返すばかりです。

広告制作プロセスの最初から市民参加型のアプローチを用いれば、

こうした問題に対処するだけでなく、包括的な表現を広告に含むことができるのです。

市民参加のプロセスと活用

市民広告Towards Changeプロジェクトは、どのように「広告制作プロセスにおける市民参加」を行ったのでしょうか。

私たちの市民参加型プロジェクトは、2つのステップで構成されています。

1つ目は市民に開かれたワークショップ、

2つ目はワークショップで制作された市民広告を紹介する展覧会です。

 

ワークショップは、意識の高い消費者になるよう促すことを目的としていました。それは、参加者が広告について考え、広告制作プロセスで重要な役割を果たせることを示し、広告における包括的な表現の重要性をより深く認識することで、長期的に働きかける教育的コンテンツです。

展示会は、物議を醸す広告について批判ではなく、建設的な対話のためのオープンスペースに多様な聴衆を集めることで、社会的インパクトを出す碇石でした。

 

「市民」という言葉を使うとき、最初に生じる疑問は「具体的には誰なのか」ということです。市民広告Towards Changeプロジェクトは、4つのグループを特定し、各当事者に役割を割り当てることで、包括性と多様性を確保し、単なるTo Doリスト的な市民参加活動の枠を超えて、本質的な市民参加を実現しました。

  1. 一般市民: これは、広告に興味があるか、または広告の影響を受ける必要はありませんが、広告の規範と慣行についてもっと学ぶことをいとわない一般のすべてのメンバーが含まれていました。
  2. 社会セクター: 主に女性や関連する社会的地位の低いコミュニティに関わっている社会団体。
  3. 各分野の専門家: 各分野の専門家:各分野の学識経験者、実務家。
  4. ビジネス部門:事業会社 商品・サービスを制作・提供し、広告に直接関わる代理店・企業。

1.一般市民と2.社会セクターへ提供した、広告ワークショップの流れは下記です。

①分析:禁止された広告や物議を醸した広告を参加者に見せ、その広告が批判を受けた理由を考える。

②ディスカッション: 参加者に広告主の意図や、その広告が倫理的・社会的に及ぼしうる影響について意見をだす。

③クリエイティブ・ブレインストーミング: クリエイティブとAIソフトウェアを使って市民の納得できる代替広告をリデザインするために、どんな広告にするか詳細のアイデア集め

 

broken image

 

ジェンダー・ステレオタイプを扱った争点となる広告については、Bristol Women's VoiceWomen's Equality Partyといった女性エンパワメント団体と特別ワークショップを開催しました。これは、特に広告に反映されにくい女性の意見を直接聞き、女性の表象を含み物議を醸した広告を、代表的で尊重されるものに作り直す機会となりました。

ワークショップ参加者の声:

「クリエイティブなスキルと消費者インサイトを身につけるために参加しました。たった40分で、ダイバーシティとインクルージョンのアイデアを学べました。」

「広告がどうに作られているのか、広告主がいかに美の基準、例えば、肌がきれいであることと美を同一視するなど、問題ある美の基準を宣伝すると学ぶことができました。」

 

3つめのグループ各分野の専門家には、ビジネス、マーケティング、社会学、政治などの専門家や実務家を招き、物議を醸した広告に対するフィードバックや批評をいただきました。これは、より包括的な社会のために継続的な対話を可能にするために、本プロジェクトがオープンであることを約束し、異なる視点を歓迎することを示すものでした。

broken image

専門家の中には、市民広告には、包括性という点でまだ改善の可能性があると指摘する人もいました。例えば、市民ワークショップのアウトプットでは、広告主の意図よりも、社会的側面が強調されることが多くありました。また、大手広告代理店のクリエイティブ・ディレクターからは、より効果的なメッセージの伝え方について貴重なアドバイスをいただきました。さまざまな分野の専門家が参加することで、ビジネスと社会の両面を考慮したバランスの取れた広告を作ることができ、企画提案の改善点を見出すことができました。

 

broken image

4つ目のビジネス部門では、クリエイティブ・エージェンシーやマーケティング・エージェンシーなど影響力の大きい企業にスポンサーを募りました。企業は、営利を追求する傾向が強いものの、社会の進歩を支援し、貢献する能力を持っています。企業からの支援は、大きく、経済界からの注目を集める事でメディア露出に貢献しただけでなく、プロジェクトの質を高めてくれました。例えば、展示会場や印刷費のスポンサーになってくれたり、来場者を楽しませることができたり、プロフェッショナルな社会的広告プロジェクトとしてのインパクトを出してくれたりする代理店もありました。

 

社会的責任のある広告の未来に向けて   

broken image

この4か月のプロジェクトを続ける中で、私たちは新たな課題に取り組むことになりましたが、同時に新たなチャンスにも胸を躍らせています。日本とイギリスでグローバルに注目を集めた市民広告Towards Changeプロジェクトは、多様な市民や専門家のオープンな対話を実現することで、広告業界に本質的かつ持続的な変化を促すことができました。

 

ライシャ・ジェスミン・ラファ、中村ホールデン梨華 

 

詳細や参加については、Towards Changeのウェブサイトをご覧いただくか、

チーム(info@ad-lamp.com)までお問い合わせください。

 

Towards Changeプロジェクトメンバー: