煽る広告「大丈夫になりたい」の是非を探ると問題だらけだったのはなぜ?

煽り表現を使う広告の最適解をさぐる

· guide

今回取り上げるのは日経電子版の広告「大丈夫になりたい」というコピーです。Twitterで少し話題になっていました。

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まず、今回は広告コピーとその背後にある意図について他の煽り広告と比較しながら分析し、代案を出します。なお、今回イラストは分析対象外です。どれもかわいくエモさあり、何か言えることはありません。

まずは広告コピーを見ていきましょう

大丈夫になりたい。
・年の離れた得意先と、何話せばいいですか。
・自分なら大丈夫。そう思える自信が欲しい。
・学生気分が抜けてない。そう思われたくない。
・来年の春は不安な気持ちも、笑い飛ばせてる?
・”一人前の社会人”ってなんですか。
・内定、取れるかな。今の私で足りてるのかな。
・就活面接が怖い。自分の浅さがバレそうで。
・春から社会人、期待30%、不安70%
・新社会人。周りに置いて行かれたくない…
・どうしたら”一人前の社会人”になれるんだろ。
・アイスブレイクがきらい。話すこと、なくないですか。
・自分の考えを持つ。簡単なようで難しい

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広告のコピーチェック

広告自体の問題点:問題度 中
結果:ぽつぽつと不満あり
理由:賛否両論なコピー

まずは広告コピーを見ていきましょう

「大丈夫になりたい」はなぜ不快感を生むのか?

1 不安を大きくする

この刺さるコピーが問題になるとすれば、
若者の不安を刺激し、更に不安にする構図があるからです。
これは弱い立場の消費者を、ネガティブなインサイトで突き動かす構図です。

お金稼げるかな、恋人できるかな、人と仲良くなれるかな…
もう、こういう不安を全部払拭して「大丈夫になりたい」。

何かに対する漠然とした不安は、
社会で生きていれば誰でも感じることで、「大丈夫になりたい」というコピーは消費者インサイトをついていると言えます。

しかし、この不安につけ込む点は、過去に炎上した広告と同じ構図です。

https://note.com/advertising/n/n47cd055fadf3

この「大丈夫になりたい」のコピーには誰のどんな視点が入っているのか考えて見ましょう。

 

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女の子を不安にさせている?

広告上で「大丈夫になりたい」と言っているのは20歳程度の学生などの若者です。が、これを広告として言わせているのは広告主です。
広告主の日経新聞や広告担当には、
20歳程度の若者は、社会構造上いないわけですから、「大丈夫になりたい」は非ターゲット、若者ではない人の思想である可能性も。
広告主は「大丈夫になりたい、ってターゲットの若者は漠然と(特定の問題を見つけないまま)感じてるはずだ」と信じています。
それを広告コピーの「大丈夫になりたい」で表現している。

日経のキャッチコピー「大丈夫になりたい。」って実際ターゲットの新卒者にはどれくらい刺さってるのか気になる。
マーケ側のオトナが「若者はこういう風に考えてるんでしょ」っていうのはは感じるけど。

 

2 ターゲットが弱い立場


更に、日経電子版U23割のターゲットは、就活中の学生や新卒として働く若者です。これは、キャンペーン内容からも明らか。
ターゲットの新卒や就活中の学生が影響を受けやすく弱い立場にある事もまた明らかです。
就活生は多くの企業を受け、人生で初めて何度も断わられる経験をしている人も多く、また新社会人も、会社に入ったばかりで何が”当たり前”で何が”正しい”かわからない、と思っている人が多いです。

社会や年上の人から何か言われた場合に
変わって順応しないといけないのは、往々にして新社会人や就活生です。

実際のTwitter消費者の声をいくつか載せておきます。

確かにこれで購買意欲が煽られる層もいるでしょう。ただ、メディアが世論に与える影響を誰よりも知っている大手新聞社が、これを何度もインスタの広告に流して若者の不安を煽っていることがつらい。

 

日経の「大丈夫になりたい」って、ひどいコピーだなあと思う
22歳以下という、新入社員の不安を煽っていくのは、中高生向けの美容整形とあんまり変わらないと思う

 

 

3 煽りたいだけに見える

また、解決策を提示していないので
消費者を煽るだけになってしまっているようにも思えます。
どういう事かというと、消費者の頭の中で
コピーとサービス内容(新聞)が繋がりにくい。

通常、広告は課題→解決の形をとります。

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したがって、この広告で「大丈夫になりたいから、日経新聞読もう」とは思わないのではないでしょうか。「私も自信と安心が欲しい」「不安だな」と思うだけ。

改めて広告を見てみると、

 

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「毎日強くなっていく。」

「毎日強くなっていく」という効果は示されています。しかし、
「大丈夫になりたい」にも「毎日強くなっていく」にも
具合的に新聞がどう関わっているのかが示されていない。

つまり、消費者からすると、新聞を想起にくいので、
「大丈夫になりたい」で煽られているだけのように感じてしまう。
不安を感じてなかった若者までが、この広告で”解決策のない”不安感を持ってしまう可能性から、広告は問題視されても仕方ないと思います。

電車で見る日経の広告がまた気になる…。大丈夫になりたいの"大丈夫"ってなんなんだろうか。あまり好きではない言葉。

マーケティング関係者なら「大丈夫になりたい」の解決策に対して
「新聞」はロジカルではない、と思うかもしれません。

 

 

煽り広告でも批判されない代案

A.サービスとコピーの繋がり

コピーとサービスが消費者の頭の中で繋がりにくいという問題点について
例えば、コピーが「大丈夫になりたい」の代わりに
「経済について学んで大丈夫になりたい」だった場合は、
日経電子版で経済知識を付けよう、というアクションがスムーズに繋がるはずです。
実際に日経新聞の広告にありました☟

 

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日経電子版サービスとコピーの繋がりが分かりやすい

B.煽る対象を明確に

代案を考える前に、
一旦、他の煽り広告を見てみましょう。
マッチングアプリTinderの煽り広告は有名です。
でも、日経とは煽り方が異なり、不快感を起こしにくいと思います。

 

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Tinderは「恋人が欲しい人の発言」を煽っており、
「恋人がいない状」に危機感を持たせるものではない事がポイントです。これで、脅しにはならない。

また「って、一生言ってな」という言葉によって
「どこかにいい人いないかな」と言った人にのみ訴求していることが明確。
だから「どこかにいい人いないかなー」なんて言っていない人を傷つけにくい。

日経の広告「大丈夫になりたい」は、
現状、消費者の不安を内在化してしまっていますが、改善案としては
「大丈夫になりたい、ってずっと言ってるつもり?」
「新聞そろそろ読まないと、ってずっと言ってるつもり?」
があげられます。
これだと、大丈夫になりたい、新聞そろそろ読まないと、と思ってる人だけをハッとさせられるのではないでしょうか。

 

C.漠然とした不安を捉え直す

そもそも大丈夫になりたい、は
”知識のなさ”や”就活の成功”に使う言葉としては少しずれている気がします。
例えば、「大丈夫になりたい」の広告コピーを使っているのが
胃腸薬だったら問題にならなかったのではないかと思います。

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ラーメンや油ものを食べてお腹がごろごろする状況に対して、
「大丈夫になりたい」→胃腸薬で「大丈夫」にしましょう!
という訴求だとすっと入ってくる。。

ここでの大丈夫は「心配しない」「安心」という意味ですね。

日経新聞では「大丈夫になりたい」ではなく
「もっと賢くなりたい」「もっと大人に見られたい」
の方がしっくりくる気がします。「もっと」をつけることで現状の消費者の状態を悪いものとして決めつける態度を減らせます。

 

炎上対策にはどうしたらいいのか?


今回は「大丈夫になりたい。」と思う人が若者だけではないということで、日経新聞で働く人の平均41.8歳向けに
「大丈夫になりたい」の広告のパロディを作ってみました。

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・就活面接が怖い。自分の浅さがバレそうで。
→新卒からの質問が怖い。自分の浅さがバレそうで。

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・どうしたら”一人前の社会人”になれるんだろ。
→どうしたら”一人前の管理職”になれるんだろ。

・年の離れた得意先と、何話せばいいですか。
→親会社の外国人上司と、何話せばいいですか。

 

こんな広告、嫌じゃないですか?

表現が不安な時は、広告のターゲットやコピーを少し変えてみても違和感がないか確認することは、有効な炎上対策になると思います。