からかい表現のある広告は炎上するのが定説と思われる方も多いでしょう。
からかい表現があっても、炎上どころか好意的にうけ取られる広告もあります。
今回はそんな揶揄表現のある広告で、好意的に受け取られていると思われる広告のポイントを分析します。広報や広告制作にかかわる方は参考にしてみてください。
広告の構
からかい表現があっても不快感のない広告ルール3
1 最終的な被害者の不在
実際のからかいのシーンは下記の3コマです。
ヨーグルッペを飲んだ娘が「たまんねぇ」と寝っ転がった様子を見て、
母親が「パパみたい」と揶揄します。
からかいのシーン
ここで終わってしまうと、パパへの批判になってしまうのですが、これには続きがあって、娘が寝っ転がっていのは、実はママのマネだった、というオチになっています。
これは被害者を作らない上手いコメディになっています。いわば、「誰も傷つけない笑い」になっていると言えます。
一見、「家でくつろぐママに失礼な表現で不快だ」というような声も集まりそうですが、ママは、加害者でも被害者でもあるので、この一方的にママを被害者だとする批判は挙がりにくいです。
どういう事かというと、
ママは、パパ及び、パパに似ている娘を「ダラダラしてる」という意図でからかったため、既に”加害者化”しています。
その上で、娘が「ママのマネだよ」という言葉でママを揶揄い返していることで、ママはからかい表現の被害者にもなっています。
つまり、ストーリーとしてママは被害者でもあり、ちょっぴり加害者でもある、という構造が生まれています。
同様に、最初に揶揄われた娘も、ママに揶揄われた被害者ですが、「ママのマネだよ」と発言することでちょっぴり”加害者”になっています。
したがって、この口論の上では、ちょっと意地悪なことを言ったママも娘も同等に被害者であり、加害者であるという構造があるわけです。
そうなると、相対的にいじめられている”被害者”は不在となり、「誰も傷つけない」やり取りとして消費者の頭で昇華されます。これは一方的に特定の相手を揶揄するような表現とは異なります。
2 からかいの対象がブランド利点のためブランドの自
虐に
更に、からかいの対象がブランドの特徴であったという点も秀逸でした。
ママが「何よ、パパみたいに」と揶揄ったのは、ヨーグルッペを飲んでリラックスした娘の姿でした。
すなわち、ブランドを飲んで得られるメリット(リラックス効果)をからかいの対象としています。
これは「女性」「男性」「老人」「若者」など特定の属性の消費者ではなく、自社ブランドを飲んでリラックスする姿を冷やかすわけですから、ブランドの自虐になっていると言えます。
例えばこれが、ヨーグルッペを飲用する文脈なしに、ダラダラしている10代の娘に「パパみたい(ダラダラしているのが悪という家族の共通観念がある場合)」と揶揄する描写であったなら、若い女性は不快感を持ったかもしれません。
しかし、そうではなく、ヨーグルッペを飲用する文脈で、そのブランド効果をからかっているので、消費者は飲んでごろごろするのは「ヨーグルッペのせい」と理解できるわけです。このような、属性を揶揄う表現ではないことが明確なストーリーだったため不快感を起こさない表現となっていると言えます。
3 トンマナで茶番であることが明
らか
更に、揶揄表現を含むのに不快感がない要因として、イラストの色や雰囲気から茶番である事が明確であることが挙げらえます。
理由としては、消費者が、この広告とリアルな日常を結び付けにくいからです。
批判に繋がりやすい広告は、消費者の頭の中で広告中の登場人物が自分と重なりやすい表現です。登場人物が女性であったために、”女性=生きるために化粧をする”と解釈され、炎上したカネボウの広告を参考にしてみてください。